「内部感覚」ってなんだ?スキーを題材にスポーツが上達する方法を教えてくれます【読書感想文 インナースキー】

「内部感覚」ってなんだ?スキーを題材にスポーツが上達する方法を教えてくれます【読書感想文 インナースキー】

スポーツの指導現場では「正しい形」であり「正しいやり方」を教える、というのが指導の基本となっているのではないかと思います。そういった指導に対して、スキーを通じて一石を投じる本です。

「正しい形」「正しいやり方」を教える限界

私も「正しい形」「正しいやり方」を教える指導には限界があると思います。
その理由は2つあって、一つは「自分の身体がどう動いているか知ることは難しい」ということと、もう一つは、競争した際に一番早い人が”正しいやり方”であるというのは本当かどうか怪しいと思うからです。
一つ目については、指導者が生徒に、このようにしなさい、と伝えた時に、全く正しく同じ様にしようとした場合に、生徒自身は同じと思っていても、実際は違う、ということはよくある話だと思います。
今ではビデオや写真を簡単に取ることができるので、形の違いを生徒へ伝えることは容易にはなってきているものの、すぐにそれをできるかどうかはセンスのようなものが非常に大部分を占めることになります。
また、一人ひとり、筋肉や骨格、関節の柔らかさが微妙に違うのに、同じ形、同じやり方を作ることは難しいでしょう。
二つ目については、例えば走る競争をした場合に、1番早い人と2番目に早い人のフォームを比べて、2番の人が1番早い人のフォームを真似て走ったとしても(それが現実的にできるかどうかは置いておいて)、更に遅くなることも考えられること、1点目で指摘したように、筋肉などの違いから個人個人の形、というものがあるのではないか、という理由があります。
そう、形を覚えていくだけでは、確実に成長に限界がくるはずです。

個人個人の「内部感覚」とは

そこで、上達にはこちらの本で紹介している「内部感覚」が非常に大切なのではないかと思います。
下記、「内部感覚」についての引用です。

 右手を上げてみる、下げる。
もう一度繰り返すのだが、今度は「右手を上げる」とは、どんなフィーリングなのか、体の内部はどんな風にその動作を感じているのかに注意してみる。
今度は、目を閉じてやってみる。上げていくとき、どんな筋肉が使われているか。どの筋肉が伸び、どれが縮むか、いち縮むか、下げるときはどうか。目を閉じたまま、体の内部の感覚だけで「いまどの高さ」かを正確に察知できるか…。 p67-68

自分の体の動きがどのようになっているのか
、筋肉の動きがどうなっているのか、それをどう感じるのかに焦点を当てます。
その際には指導者の動きや基本の動きがどうかというのは全く気にせず、自分の感覚のみに集中することで、その上達は、自然とそれぞれに合った「やり方」を見つけていく、という流れとなります。

「内部感覚」へ焦点を当てるコツとは数字のカウント

ただし、自分ひとりで例えば何かの動きを意識してやってみても、それを続けるのは難しいです。
私は5秒もすれば他のことを考えてしまいます。そこで、こちらの本では数字のカウントをします。
例えば、スキーのエッジが最も立っている状態を5、板がフラットな状態を0として、滑りながら今の状態が何かをずっと言い続けるのです。
そうするとどの数字の場合にどのような滑りができるか、本人が気づいていくのです。
これは、後傾で滑ることが癖になっている人も、踵に体重がある場合を5、つま先に体重が乗っている場合を0として、滑りながらずっと言い続けると、自分がどこに乗って滑っているかを意識し、どこで滑ると滑りやすいのかを「自分で」認識することができるでしょう。
この数字が例えば0〜5の6段階だと細かくて難しい、という場合は、1〜3の3段階や1と2の2段階でまずは初めて、徐々に増やしていくなど、レベルに合わせて使える方法であると思います。
ターンに入るタイミングを時計の数字に見立てて、11時からターンや、5時からターンなど、様々な応用が可能です。
最も根幹をなしているのは、①自分が通常どのように動いているのかを知ること、②いつもの動きがどのようなものかを知り、いつもと違う動きを具体的な数字を意識しながら試してみること、だと思います。
その中で自分がよく滑れたと思うものが、タイムが速かったものがいい形なのではないでしょうか。
テニスの上達についても、本を出しているそうなので、そちらも読んでみたいと思います。
形一辺倒の指導や上達法からはまた別のアプローチとして、知っておくのはいいのではないでしょうか。
オリンピックに出るような選手は、おそらく常人は0〜5の6段階での分け方のところを、50段階ぐらいの分け方のような細かな「内部感覚」をもっているのではないかと思います。
そう、イヌイットが雪を50以上の単語で分けていたと言われるように。

こちらが同様に内部感覚に焦点を当てたテニスの本。

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